体を少し右に傾けながら、歩いている義父と買い物途中の生協で出会いました。顔色は陽に焼け艶やかで、いつもながら自己管理が素晴らしいことだと思いました。義父は今年6月末には95歳になります。
「お父さん、何だかこの頃、ボケはじめたみたいだわ」と、義母が言い始めた4年前の春。10歳近く若かったその義母の方が入院4日目で旅立ってしまい、皆で途方にくれました。「おとうさん、ひとりで暮らしていけるかしら」と・・・
初七日の法要が終わり少しほっとした席で、義姉が尋ねました。「おとうさん、いままで包丁なんか持ったことあるの?」「あるさ。軍隊に行った時にね」・・・
しばらくすると、家中の整理をはじめた義父。畳替えもして心機一転。私たちの心配をよそに家事への挑戦を始めたのです。
写真一筋だった義父にとっては特に料理は新鮮だったらしく、今では自分で作り食べることを心から楽しんでいる様子です。
ここ4年で記憶や気力がすっかり甦って、新聞は隅から隅まで目を通すし、素晴らしい生き方を見せてくれています。私たちは「おとうさんって、すごいねぇ!」と感嘆の声をあげつつも、あまり手や口を出さないことにし、義父のマイペースを見守っています。
「おとうさん、その前向きな生き方、尊敬しています。どうかいつまでも長生きしてくださいねぇ!」