義父は先週土曜日、往診してくださったDrのご配慮で救急車で緊急入院しました。
病院に到着した時はひどい貧血状態ですぐに輸血をしましたが、意識はしっかりあって辛そうでなかったのが不思議でした。
月曜日の検査結果はやはり重篤なものでした。胃の半分とすい臓や腹壁にも悪いものがあり、手術しても、しなくてもなかなか厳しい状況とのこと。家族で話し合った結果、高齢なので穏やかな道を(になるかどうかも不安ですが)選ぶことにしました。
「どちらを選んでも死ぬ時は苦しいですよ、虫だって死ぬ時には苦しがる~」とは、外科部長さんのお話。しかし、静かな安らぎが訪れることを信じて“手術しない”を選択しました。
病室の義父は体が楽なのかおしゃべりに戻り、いろんな話をしています。「履いてある靴下はみっともないから新しいのを買ってきて」とか、「戸棚のこけしの奥にあるの宝くじが3000円当たっているからあげるよ」とか、「障子を張り替えてね」とか。そして、「ここの病院の看護ふさんたちは、とってもよくしてくれるんだよ!」と…
行く人にも残る人にも、この時間が限りなく必要なのだなと思いました。
そんなことを思いながら病院を出て買い物し、自転車のかごに積むと、どこからともなく1匹の金色のトンボが舞い降りてきたのです。
私と対面するように顔を向け、頭をくりくり動かしながら、しばらく停まったまま。<あっ、義母さん!!>…とたん、トンボは空に昇っていったのでした。
その晩、地方からきた義妹が家に泊まることになり、夜中にトンボの話をしたら、「そういえば、昔、お母さんと出掛けた時にトンボのブローチを見つけてね、珍しいから買おうよといわれて、おそろいで持っていたのよ」と、言い出したのです。
5月のトンボ、あれはやっぱり“おかあさん”だったのですね…